エネルギー・情報卓越教育院長 挨拶

 伊原 学
東京工業大学 エネルギー・情報卓越教育院長 / 物質理工学院 教授

 気候変動を抑制しつつ経済を発展させることができる持続可能なエネルギー社会の構築は、早急に取り組まなければならない世界規模の課題です。ここ数年で、急速に再生可能エネルギーのコスト低減が実現し、 ESG投資(Environment Social Governance)の観点は,既に産業に大きな影響を与え始めています。また、化学的蓄エネルギーとして機能する水素エネルギーを、適切なエネルギーキャリアにして世界規模で融通する「グローバル水素」、国内の再生可能エネルギーなどから生成し、ローカルに活用する「ローカル水素」は、将来の持続可能な新しいエネルギー社会構築には不可欠な技術として認知されるようになってきました。これから、2030年、そして2050年に向けて、エネルギー技術の進展によって社会が変わっていく、いわばエネルギー研究開発駆動型の社会変革期を迎えることでしょう。

 一方で、コンピューティングの向上による、ビッグデータの一括処理がワークステーションレベルでも可能になったこと、さらには、様々なデータ科学的解析手法がライブラリとして容易に利用できるようになったことなどから、情報科学の活用による研究開発の加速がさまざまな分野において期待されるようになってきました。

 そのような背景のもと、2019年2月に本学に設立した“InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム”(以下、InfoSyEnergyと表記)は、新たなエネルギー社会の構築に向けて、AI解析やデータ科学を融合した“ビッグデータ科学”(本学では“ビッグデータ科学”を,データ科学とAI解析と定義)をエネルギー分野の要素研究、システム研究に多様に活用し、デジタル化による持続可能な低炭素・脱炭素エネルギー社会への転換において、主導的役割を担っていくことを目的としています。ビッグデータ科学を活用し,新たな価値やサービスを創出することで、人々がエネルギーコストや環境行動等を意識せずとも環境と経済の両立を達成できるエネルギー社会を、本コンソーシアムでは,“Ambient Energy Society”(アンビエントエネルギー社会)と定義し,産学連携による実現を目指します。

 さらに、2020年8月には本学から提案した「マルチスコープ・エネルギー卓越人材」が文部科学省卓越大学院プログラムに採択されました。そこで、2020年12月に東工大InfoSyEnergyにおける教育部門として、「エネルギー・情報卓越教育院」を設立しました。学内から、エネルギー・情報分野における優秀な修士学生を選抜し、修博一貫プログラムで今後のエネルギー変革をリードする卓越した博士人材を育成します。本教育プログラムでは、多元的エネルギー学理を基礎とし、ビッグデータ科学を活用して研究開発をおこない、技術で新しい社会をリード、構想していく人材を輩出します。恵まれた経済的支援によって研究活動に専念してもらい、国際フォーラムや研究ワークショップ、海外インターンシップなどを通じて、InfoSyEnergyの会員企業、海外トップレベル大学と連携し、共同研究を通じたグローバル博士人材の育成を行うことも大きな特長です。学生の皆さんは、ぜひ、「マルチスコープ・エネルギー卓越人材」を目指してください。そして、企業の皆様におかれましては、InfoSyEnergyへのご参画をお持ちしています。

 引き続き、ご支援・ご協力いただけますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

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