コンソーシアム代表挨拶

InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム 代表
エネルギー・情報卓越教育院 教育院長
東京工業大学 物質理工学院 教授
伊原 学

気候変動を抑制しつつ経済を発展させることができる持続可能なエネルギー社会の構築は、早急に取り組まなければならない世界規模の課題です。ここ数年で、急速に再生可能エネルギーのコスト低減が実現し、 ESG投資(Environment Social Governance)の観点からの原子力や石炭火力への投資抑制等は,既に産業に大きな影響を与え始めています。また、大量な化学的蓄エネルギーとして機能する水素エネルギーを、適切なエネルギーキャリアにして世界規模で融通する「グローバル水素」、および、国内の再生可能エネルギーなどから生成し、ローカルに活用する「ローカル水素」は、将来の持続可能な新しいエネルギー社会構築には不可欠な技術として認知されるようになってきました。

そのような背景のもと、2019年11月に本学に設立した“InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム”は、新たなエネルギー社会の構築に向けて、AI解析やデータ科学を融合した“ビッグデータ科学”(本学では“ビッグデータ科学”を,データ科学とAI解析と定義)をエネルギー分野の要素研究、システム研究に多様に活用し、デジタル化による持続可能な低炭素・脱炭素エネルギー社会への転換に、主導的役割を担っていくことを目的としています。ビッグデータ科学を活用し,新たな価値やサービスを創出することで、人々がエネルギー選択や環境行動等を意識せずとも環境と経済の両立を達成できるエネルギー社会を、本コンソーシアムでは,“Ambient Energy Society”(アンビエントエネルギー社会)と定義し,産学連携による実現を目指します。

本コンソーシアムの設立に際し、70名以上のエネルギー・情報を専門とする本学教授・准教授を中心に議論を重ね、9つのエネルギー研究重点分野を設定いたしました。「②再エネベースロード化技術」では、「①系統協調分散エネルギーシステム」との連携制御による系統安定化技術に加え,再生可能エネルギーをベースロードとする原子力発電の負荷変動運転に関する検討などを、本学先導原子力研究所などが主導して行います。また、本学の強みであるデバイス研究「③光エネルギー変換(太陽電池、光触媒など)」、「④水素 燃料電池・電解/蓄電池」や,これまでのエネルギーの量(kWh)や出力(kW)のみの価値から、調整力(ΔkWh、ΔkW)や低炭素化といったエネルギーの価値の多様化を視野に入れた「⑤電力自由マーケット設計・学内仮想取引」、グローバル水素の製造から運搬/貯蔵/利用に向けた「⑥エネルギーキャリア/脱炭素触媒」、大規模な水素エネルギー利用や熱エネルギーの有効活用を目指す「⑦水素燃焼・熱利用」,将来、エネルギー分野への貢献が期待される「⑧将来技術」、エネルギー社会の現在をデータを活用して分析、評価し、未来をデザインする「⑨技術動向/未来シナリオ/サービス」,といった9つの重点研究を、ビッグデータ科学を多様に活用し、産学連携で研究と教育を両輪で推進致します。

現在(2020.6)までに、26のエネルギー・情報関連企業,5の公的機関の国内機関のほか、14の世界トップ大学(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、シンガポール、韓国、中国)が会員として参画し、グローバルに活動していきます。引き続き、企業の皆様のご参画をお待ちしていますので、ご支援・ご協力いただけますよう何卒よろしくお願い申し上げます。